
取引先と大喧嘩した。正確に言うと、逆切れされたのだが。
”当たり前”ができない取引先に対して死ぬほどムカつき、夕方に私は上司に話を聴いてほしいと持ち掛けた。多忙でふらふらになっていた上司だが、こういう時絶対に話を聴いてくれる、安心できる存在。二人で休憩室に行き、事の顛末を喋った。
「…っていうことがあったんです」
私だって喧嘩したい訳ではない、ましてや取引先のことだ。雇用も違う、社内の人間に怒るのとは訳が違う。
「晴の言うことは、その通りだと思う。ただ、相手(取引先)が聞く耳持ってないよな」
上司が言う。その相手は、他の人からも同じ内容で警告を受けていたようで、ご自身でも嫌になっているのだろう。
「晴は自分で伝えることはしたんだから、今度は人を使いなさい。取引先の上層部に話をして、『〇〇(私の職場のトップ)も気に掛けているんですが、いきなりそれをすると話が飛躍するので私から伝えたんですけど、(取引先)さんには聞き入れてもらえません。(上層部)さんから一言伝えてもらえますか?』…みたいな感じで。『〇〇な所は良いんですけど、××な所が…』って上手に持ち上げながら、駆け引きして。
あの人は自分事として注意を捉えられない人なんだから、あの手この手で人を変えて伝えてみよう。一旦晴は黙ってていい。私を使ってもいい」
そう言ってもらえると、何だか救われる。
「きっと、(取引先)さんがあの年齢であの立場にいるってことは、自分で成長できていない人ってことなんやで。私(上司)と同世代くらいやろ?人間、成長しないとあかん。
晴は今丁度壁にぶつかってるけど、それはいい経験になると思うよ。綺麗ごとでは人は動かない。薄っぺらい人って、すぐ分かるやん。ベタベタなことが出来る人が、最後には評価されるんだから。特に晴は若いし、プライドを持っている相手への伝え方も難しい。特に今、晴がやっている仕事を他でやっている若手はいないから、晴自体がめちゃくちゃ目立つ。でも、見ててくれる人はいるから」
「はい…」
「部長の評価も高いよ。多分、組織改正のポスト減になってなかったら、晴はこの春昇格してたと思うよ。今の職場か、別の職場に異動してかは分からんけど」
「そうですかね…」
「見てる人は見てるって。私だって…こうやって晴が私についてきてくれるのも嬉しいし、この人のために仕事しようって思ってもらえるのが一番やから。結局はそこしか残らないから。
私も昔さ、部下の〇〇さんに『訴えるぞ』って言われたことがあって。めちゃくちゃ病んだんやけど、その時の部長が『絶対言い返してあげるから、〇〇さんに言い続けることをやめるな』って言ってもらって、救われて立ち直れた。晴もこれから苦労すると思うけど、歳上の部下をたくさん持つことになる。今後はポストも減って、昇進もたやすくできなくなる。私、職場のトップに言ったけど、晴を絶対に一発で課長にさせたいと思っているから、今の職務内容にしたんやで。簡単に言うことを聴く人ばかりじゃないからこそ、相手に自分を認めさせることが大事。私もまだまだ修行中やけど」
いろんな思いがあったけれど、嬉しかった。飲みに行けるようになったら絶対にご飯に行こうという話もした。何でもおごってくれるらしい(笑)。
「(取引先に対して)めっちゃ腹立つんですけど…(わなわな)」「晴~、怒りたい気持ちは分かるけど、怒るな、怒るな」誰よりも怒りたいであろう上司に手を繋がれ、笑ってうなだれる。先はしんどい。でも、こんな風に思って伝えてくれる上司がいるということだけでも、私には十分仕事をする理由になるんだ。