To the moon and back.

関西在住30代OL。日々のつれづれをぼちぼち綴ってます。内容は、お買い物ログ・婚活のやきもき・仕事のあれこれ・読書記録・雑記(ただの日記)多め。

私の人生のバイブル本、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』

大学時代から地味に、ブクログという読書記録管理アプリを続けている。今600冊くらいマイ本棚に並んでいるのだが、社会人になってからは全然本を読んでいないなあと愕然とした。グラフを見ると、450冊くらい読んだ大学4年間に比べ、社会人ではその半分位しか読んでいない…もう社会人人生が学生時代よりも長くなってしまったというのに…(笑)。

で、そのうち最高の1冊を決めようとふと思い立った。やり方は簡単、評価五つ星★★★★★の本の中から選べばいいのだ。五つ星は、簡単にはつけないことに決めている。読んだことで衝撃が走った、何度でも読みたい、結果的に人生を変えてくれたかもしれない……そんな熱い思いがほとばしる20冊程度の本たちだ。スマホ画面をスワイプしていたら、ものの1分で決まった。はや。

 

という訳で、私の人生のバイブル本はこちらです!じゃん!

 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』遥洋子(2004)ちくま文庫

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫)

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ (ちくま文庫)

  • 作者:遥 洋子
  • 発売日: 2004/11/11
  • メディア: 文庫
 

発行年が2004年ということで、結構古い。ブックオフで売られているのも見たことがある。なんせ、私の初読は中学生の時だ。そんな昔から読んでいるのに、今でも新鮮な発見がある。タレントの遥洋子さん著。上野千鶴子さんは東大の社会学者。近年は東大入学での祝辞が話題となった(原文読んで泣きそうになったうちの一人です)。

この本を選んだ理由はシンプルだ。めちゃくちゃ面白いから。

 

祖母の家にあったこの本。部屋の中に置いてあったので、読んでいた。中学生だった私、当時難解な箇所はもちろんあったものの、一気に読み終えてしまった。今思えば初めて、フェミニズムという言葉に出会った瞬間かもしれない。一人で興奮していると、母が私に気づいたようだった。「その本、お母さんが買ってん」えっ、そうなん?何だか意外なんだけど。「昔、学生の頃上野先生の講義を受けたことがあってな。先生の過激な発言もたくさんあって、面白いって、人気の講義やったな~」懐かしむように母は言った。えっ……マジで???社会学フェミニズムにおける巨匠、上野千鶴子先生に??????今ならそう思う。その時はふ~んとしか思わなかったけど。

私は昔から、いろんな感情を”感じやすい”タイプなんじゃないかと、幼心に思っていた。あまりにもストレートに物を言ってしまうので、割と私の両親や周囲をびびらせてしまっていたこともある。普段静かなタイプなのに、時々正論を相手にはっきり伝えすぎるため、周囲がギャップに驚き慌てふためく。幸い、私は両親の理解や上手く受け止めてくれる先生にも出会えて、それなりに心に留められる思春期を迎えられたが。

世の中の理不尽や不条理を「そういうもんだ」としまいかけた頃、この本に出会った。著者はタレントの遥洋子さんで、上野ゼミに通われる様子をユーモラスに描かれている。私も遥さんと同じ気持ちになって、夢中で読んだ。遥さんの描写が面白すぎるんだよ。そしてジェンダーにまつわる事柄に対して、「私が違和感を覚えていたことって、学問になるんだ!」と気づいた瞬間でもあった。中学生の私に、大学なんて未知の世界だったけれど、非常にわくわくする道が拓けたのも確かだ。

また、この本を読んだのが祖母の家というのも、大きかったのかもしれない。私の祖母は、当時にしては珍しくバリバリのキャリアウーマンで、男社会の中に女性社員一人で働いていたそうだ。セクハラパワハラは日常茶飯事だったらしいと、後に母から聞いた。同僚に胸を触られそうになった時、その腕を掴んで「触るなら触ってみい!」と言ったとか(祖母は亡くなってしまったのでことの詳細は聞けないが、すごいエピソードだと当時思ったものだ)。母は今でも、「昔のお母さんの会社の集合写真を見たら、女性はお母さん一人だけだった」と語る。私にとっては心優しい大好きなおばあちゃんだったけれど、戦後の激動の時代を生き抜いた人だった。その祖母が隣の部屋にいる中で、静かに読む時間は今思えばとても大切だったな。

 

さて、高校受験に必死でその本を読んだことをしばらく忘れ、幸運にも第一志望に入学する。高校3年のある時、友達が家庭内の事情で非常に悩んでいた。時が経つにつれ、どんどん深刻になっていくのが分かった。その悩みが、ジェンダーにまつわることだなあと思った私は、ふと『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』の本を思い出した。「あのさ、ちょっと貸したい本があるんやけど。エッセイやし、気楽に読めると思うし、適当な時間に読んでみて」そう言って、私はこの本を渡した。

数日後、彼女が教室で本を返してくれた。「貸してくれてありがとう。あのさ…読んで、めっちゃ良かった。涙が出るというか」ええっ!そこまで感じ入ってくれるとは。私がかつて得られた胸のすく思いを、彼女も味わってくれたならとても嬉しい。その後彼女はジェンダーを学べる学部に進学したいと考え、希望どうり進んでいった。

 

そんなこんなで、大学時代。

私が専攻分野にしたのは、教育社会学。そして卒論テーマは「教育とジェンダー」、まさしくゴリゴリのフェミニズム、そして社会学であった。ただ、大学時代はどちらかというと講義や研究室訪問で選択を決めたため、本の影響はさほどなかったと思う。でも、中学時代に心揺さぶられた学問に結局還ってきた自分というのは、どこかしら一貫性があるのだなと思った。社会学と言えど、様々な学者が様々な論文を出しており、どちらかというと教育の本ばっかり読んでいた私だけれどね。遥さんの上野ゼミでは超スパルタな様子が描かれているが、私の所属していた研究室は終始穏やかでのほほんとしていた。教授も著名な方だったが、常に笑顔を絶やさない方だった(何なら今年、あけおめLINEが来たことに驚いたものだ。笑)。しかし学術となると一変、新進気鋭の学者として、助教時代から頭角を現していらっしゃったとか。カッコ良すぎる。

そして印象に残っているのが、ある友達との会話。その子とは定期的に「読んで面白かった本」を伝えあっていたのだが、私が最初にその質問をされた時に応えたのがこの本だった。彼はすごい。すぐに買って読んでいた(そのスピード感に何度見習わなければと奮起させられたことか)。余談だが、友達のオススメ本を読むって最高。親密になりたい時、この手法がとても有効であることを知ったのも学生時代だったな。人のオススメをすぐ試す、これ以上に密になれる方法を私は知らない。

くだんの彼の感想は、結局本人からは聞けずじまいだった。しかし数か月後、彼がSNSで「読んでよかった本」を長文で書いており、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』がめちゃくちゃプッシュされていたのだ。おい!めっちゃ人にオススメしてるやないか!言っとくけど、それ紹介したの私やぞ!(笑)

 

 

そんなこんなで本を読むと、これまでの私の問題意識と辿ってきた過去が交差し、読む度に静かな感動を味わう。丁度昨日も久々に読み返したら、面白くて結局深夜1時まで読みふけってしまった。何度読んでも面白いって、すごくない?これはひとえに遥さんのリズミカルな筆致と、上野ゼミが学問のプロを育てる道場だからだ、と思った。

 

私がいつも勇気づけられる一節がある。遥さんが、他大学で講師をするプレッシャーに耐えられないと上野先生に泣きつく場面だ。

上野先生は言う。学問は訓練であり、そして訓練よりもっと重要なことがある。それが、直観力。もやもやとした物事を見え難くしている環境を通して、その向こうにある本性を見抜く力だと。

「どれほどの教養を積んでも、この直観力がなければ、一生勉強したってダメ。」

そして上野先生は遥さんに言うのだ。

「あなたにはそれがある。」

私はこの一節が大好きで大好きで、今でも定期的に読み返す。どれだけ賢くても、他人の言うことを鵜呑みにしていては、何も生まれない。えっ、なんで?おかしくない?どうして?…そう思うのは簡単なようで、難しい。時には無かったことにした方が楽だったりする。でも一時的に傷口を防いてしまうと、後でバックリ割れて、後遺症が出てくることもある。定期的に読み返したい一節だ。

昔の自分も今の自分も、やはり地続きで、そんな簡単に人間変わらないよなあって思う。先日仕事で上司とああだこうだ言い合った時も、私の核は変わらないんだなと感じた。当時の私も、今の私も、悩んでいるところはさほど変わらない。でも、ちょっとは闘い方を身に付けたかなというのが、30代の読後感だ。10代、20代、30代と人生で背中を押し続けてくれた本が、今後どのように自分を鼓舞してくれるのだろう。それもまた、人生の楽しみだ。

 

(遥さんが学んだケンカのしかたとは⁉気になる人は、読んで下さい。(笑))

 

★本日の一冊★×3

今日は3冊一気に読んだぞ!

『全国のR不動産:面白くローカルに住むためのガイド』東京R不動産他(2014)学芸出版社

大学時代、『東京R不動産東京R不動産(2006)アスペクト を読んだ。当時の私の読後コメントには、「読んでいるだけで楽しい物件!」と書かれている。久々に本書を読むと、R不動産さん、全国にネットワークが広がっているらしい。コロナ禍で地方移住やステイケーションがもてはやされているが、本書の発行年は2014年。7年前!今の話だっけ?と思う位、先端をいっているような気さえしてくる。住む場所を頻繁に変える、ゆかりのない土地に住むって、なかなか馴染みがないけれど、仕事の部分が大きいかなあ。リモートワークできる職種というのが最たるものかもしれない。そんな視点で就活をしたことが無かったけれど、今の学生ならばそんな観点も併せ持つのだろうか。

 

『2枚目の名刺 未来を変える働き方』米倉誠一郎(2015)講談社+α新書

2枚目の名刺 未来を変える働き方 (講談社+α新書)
 

学生時代にキャリア関連図書を読み漁っていた時代があった。その中でずっと気になっていたのがプロボノ。いいな~こんな風に仕事を活かせたら素敵だなと思っていたことを、本書を読んで思い出す。私、二枚目の名刺を持っているかと言われたら、持っていない。専門性があるかと言えば、ない…。この問いに就職してからずっと悩んできた気がするし、人事面談でも話をしていた。

去年、自立支援施設で働く友達が、せっせと農作業の様子をSNSに挙げていた。どうやら施設内で育てているらしい。愛着あふれんばかりの投稿に思わずにやけてしまった。実際に会っても作物の話を嬉しそうにしてくれるのだが、話の流れでお互いの会社での名刺を見せ合った時、彼は自身の役職の上をとんと指で指し、「ここに野菜ソムリエって書いてあったらおもろくない?意味わからなさ過ぎてさ(笑)。資格取ろうかな、と思ってんねん」と話してくれた。実際、ちょっとずつ勉強しているらしい。それを聞いていた私ともう一人の友達、「めっちゃええや~~~ん!」と叫んだのだが、そういう、実際の仕事にも絡めて自分で誇れる、二枚目の肩書があるといいよね。うーん、もしかして今年はキャリア再考の年なのか?結婚の年にするつもりなんだけど(笑)。

 

『哲学の世界へようこそ。答えのない時代を生きるための思考法』岡本裕一朗(2019)ポプラ社

 この本、面白かった!あとで読むと高校生や大学生向けに書かれた本だそうで、納得。哲学って身近な問いから始められるんだなあと、ハードルを下げてくれるような一冊だ。トピックもAIからパパ活まで様々。そして私がおおっ、いい表現だ~と思わずメモしたのが、こちら。

第5章にあたる『「友だち」を考える どこからが敵なのか?』で、スピノザの考えが紹介されていた。「友だち」と「敵」は…活動力能の変動がとる二つの方向なのだ。活動力能が減少をみること(この変化が悲しみである)、これは「敵」。増大をみること(喜び)、これは「友だち」。”

つまり、自分の力を増大させる対象は友達。低下させる対象は敵とみなす考え方である。さらにこの考え方のメリットは、自分にとっての友達は犬でも猫でもオンラインゲームのアバターでもいいことだ。

うーん、これはすごくいい考え方ではないかと私は思う。よくある表現で「友達は狭く深く」付き合えたらいい、というものがあるが、なーんかしっくり来ていなかったんだよな。でも「一緒に居て自分の力が増えるのが友達」理論でいくと、自分の周囲の人間関係の中で、友達との心理的距離が変動するのもおかしくない。趣味が友達、仕事が友達、それも結構。友達と接することで自分の力がみなぎるって、素晴らしいことだもんね。うん、しっくりくる!