To the moon and back.

関西在住30代OL。日々のつれづれをぼちぼち綴ってます。内容は、お買い物ログ・婚活のやきもき・仕事のあれこれ・読書記録・雑記(ただの日記)多め。

強い女たちシリーズ③『アナトゥール星伝』の鈴木結奈

強い女たちシリーズ、前回の記事はこちら。

 

rosecosmos.hatenablog.com

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今回は講談社ティーンズハートにて発刊、20年以上かけて完結された、

折原みと先生作『アナトゥール星伝』シリーズの鈴木結奈だ。

女子高生の鈴木結奈(通称ユナちゃん)は、とある日、書物「アナトゥール星伝」を読んで、異世界ナトゥールへとトリップする。辿りついた砂漠の国・エスファハンで、金の砂漠王(バーディア)と称されるシュラ・サーディン王子と犬猿の仲となるが、次第に想いを通わせ、最終的には紛争を一時停止させて、伝説の「銀の星姫(メシナ)」と呼ばれ恋人となる。ここまでが上記リンク先の第1巻!

 

この物語の魅力は何といっても、異世界ナトゥールの冒険譚。ポップな表紙とは裏腹に、扱われる内容はアナトゥールの世界での戦争や民族対立、奴隷制度などとかなりヘビーなのだが、シュラ王子と解決策を探っていく中で「これって私が住む、日本や世界が抱えている社会問題と一緒だ」とユナちゃんは気付いていく(それは作者の折原みとさんの問題意識ともいえる)。地球(日本)とアナトゥールを毎度トリップするユナちゃん、大変だ。

 

全20巻あり読み応えがあるが、その中でも私が特に好きな巻を紹介していこう。

 

ナトゥール星伝2:銀の星姫(メシナ)

 アナトゥール星伝の中で上下巻になっているのは、この『銀の星姫』・『黒の暗闇王』・『緑の守護神』のみ。

「銀の星姫」では、シュラ王子の婚約者となったユナちゃんが、国を取り巻く戦争に向き合い、決意を固める巻。アナトゥール星伝の中でもハードな内容だが、読み手としては非常にワクワクした。途中、命の危機に瀕したシュラ王子を救いたいと願ったユナちゃんが元いた日本にトリップし、親友・沙夜ちゃんの父が経営する総合病院へと王子を担ぎ込むシーンは、ドキドキして何度も読み返したものだ。そして大人気キャラ(?)ナディル・サルファンの登場も捨てがたい。ユナと対立していたが最後の最後でお互いを理解し合うものの、ユナを襲う敵国の凶刃に倒れてしまうシーンは必見。

 

ナトゥール星伝5:紅の花炎姫(エントラーダ)

熱烈なワガママ王女、リディア姫の登場する巻。序盤にシュラ王子は記憶を無くして行方不明となり、神の化身として崇め奉られてきたリディア姫とユナちゃんは真っ向対立。この巻では「奴隷制」がテーマになっているが、奴隷たちの希望の星となったユナを守る為、ユナを差し出せというリディア姫の命令に対し「私がユナです」と女性たちが次々に立ち上がるシーンは胸熱だった。その後、ユナちゃんは自身が本人だと告白し、記憶を無くした王子とコロセウムで決闘することになる。…踏んだり蹴ったりの巻である(そもそも踏んだり蹴ったりでない巻がないけれど)。

 

 アナトゥール星伝16:風色の自由王(リヴァース)

先述のリディア姫とも深い関わりを持つこの巻。海賊たちの王であるヴァン・ブルーの爽やかさもさることながら、なんとこの巻、ユナちゃんは親しくなった女性の出産を介助し、子どもを取り上げるのだ(そしてその後、ユナちゃんはリディア姫の子どもも取り上げるのだけれど)。タイトルの通り、風通しがよくテンポの良い巻だ。

 

 

ナトゥールでの冒険で、名実ともにエスファハンの女王(候補)として強くなっていくユナ。恋人であるシュラ王子とは割と最初からラブラブで、夫婦のような安定感があるのも良かった。そして、一つ一つの社会問題に真摯に向き合い、答えを出していく姿に憧れた(ユナが日本から医療技術を持ち込んだ結果、アナトゥールの医療が進歩するなど、両世界が密接に関係している設定も面白い)。ユナちゃんは終盤に大学に進学し、農学部で砂漠の緑化に取り組むというリアリティも良かった。

 

そして折原みと作品の良さは、作者ご本人が挿絵を描かれていること!(折原先生は漫画家でもある)後に、アナトゥール星伝も完結後に折原先生の手でコミカライズされている。作者が自ら漫画化するって、あまりないことなんじゃないかな。

 

 

20年以上かけて完結した作品だが、最終巻のあとがきに、折原先生が「みんな、ちゃんとハッピーエンドになったよ~~~!!!」と書いていたのが、一読者としてとても嬉しかった(本当にすごいと思う)。発刊時に中高生だった読者たちは、完結時にアラフォー世代!?

読者としてはユナちゃんの年齢を追い越してしまったけれど、ユナちゃんの魂は、確実に私の心にも引き継がれているのだ。

 

 

NEXT HEROINE'S HINT!⇒ファンタジーの傑作にしてトールキンの代表作。でもブログに書くのは正ヒロインではありません!(ここ重要)